腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

文藝

文藝 2012年 08月号 [雑誌]

文藝 2012年 08月号 [雑誌]

大鋸一正さんの短編『O介(オースケ)』が新聞でチラッと紹介されてた。


産まれたばかりの赤ん坊の識別タグを盗んだ「わたし」。
「わたし」とは誰ぞ。

おまえはわたしのものではありませんから、たとえば、おまえから近い順に死んでいったとして、おまえを手に入れることができる、わたしは何番目でしょうか。おまえがわたしのものになることがないのであれば、せめて何か、できるだけおまえの本質に近いものを手に入れたいと思うのは自然なことでしょう。

赤ん坊は健やかに成長していく。
特にこれといって何が起こっているわけでないのに、何故こんなに胸騒ぎがするんだろう。怖い怖い怖い。恐怖を感じていたのに、終盤にはじんわりと拡がっていく幸福感。いつの間にか「わたし」の愛情を一身に受けるО介になっていた。そして、「わたし」を超える慈しみの眼差しで息子を愛せるか自問したりした終戦記念日




沼田まほかるさんの『林檎曼陀羅』を読んだときの感覚に近かった。

痺れる

痺れる