腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

晴天の迷いクジラ

晴天の迷いクジラ

晴天の迷いクジラ

ただ「死ぬなよ」って、それだけ言えばよかったんだ

由人(24歳) 仕事の忙しさから鬱になり、恋人に振られ、勤めていたデザイン会社が潰れそうな(ついでに自分も潰れそうな)青年。
野乃花(48歳) 女を捨て故郷を捨てがむしゃらに働いてきたが、不景気のあおりで自らの会社が壊れていくのをただ見守るしかない女社長。
正子(16歳) 母親の偏った愛情に振り回され、たったひとりの友達を失い、引きこもったリスカ少女。

まず、彼ら彼女ら各々の生立ちから死に向かうほど疲弊する現在までが描かれる。そして、心も体も瀕死の三人は浅瀬に迷いこんだ瀕死のクジラを見に行く。
彼らの母親たちもある意味狂ってる。マザーズ!を読んだばかりだから、そう思うのか。歪んでしまった愛情に潰される少女。すべてを捨て、逃げ出した少女。そして愛情を受けることがなく成長した青年。どうにもこうにも救いようがない、そんな彼らに、そして私たちに「いいから絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ」と、作者はど直球を投げてきます。
チッ、こんな上手くいかないよ。やっぱ小説だねと拗ねるも良し。しかし、人間素直が一番ですよ。チッと舌打ちしながらも優しくちょっと笑える結末に涙。


何故だか『ノルウェイの森』を思い出した。
年齢も関係もまるで違ってはいるが、僕と直子とレイコさん。彼らの魂もこんな風に救われれば良かったのに。中学の多感な時期に読んだからか、彼らの痛みが自分のことのように苦しかった。ハッピーエンドでなかったからこそ、いつまでも心に引っ掛かっているのかもしれないが。





最近お昼寝が復活したので、読書熱が沸々きてます。