腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

境界の町で

境界の町で

境界の町で

2011‐2014福島県浜通り、検問のある町。たしかな描写で、風景が、土地が、人間が、立ち上がる。岡映里、衝撃のデビュー作。

震災があったとき、「誰からも心配されなかったし、誰からも探してもらえなかった」わたし。「本当に会いたい人」を探すため街を流れ出て、福島に。
警戒区域は魅力的な聖域のように見え、刺激と陶酔そのものだったと。

多方で絶賛されている本書を読み始め、なんだかひどく居心地の悪さを感じた。なんだろなんだろと思ったが、著者自身の不安定さだったのか。薄れてしまったあの頃の空気が一度に戻ってくる。忘れてはいけない。忘れられるわけがない。でも、忘れてしまいたいんだろう きっと。

人の人生の稲妻のような一瞬に触れて、私の言葉も瓦礫になった。福島でそんな経験を何度もした。共感も、心配も、同意も、言葉にした瞬間すべて嘘になった。すべての言葉を奪われてしまった。共感したい、同意したい、同化したい。でも言葉という道具は頼りにならなかった。




優劣をつけるものではないが、個人的に彩瀬まるさんのルポの方が心動かされた。

暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出

暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出