腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

ゼラニウムの庭

ゼラニウムの庭

ゼラニウムの庭

わたしの家には、謎がある―双子の妹は、その存在を隠して育てられた。  家族の秘密を辿ることで浮かび上がる、人生の意味、時の流れの不可思議。生きることの孤独と無常、そして尊さを描き出す物語。

読み始めるのがもったいなくて、なかなか開けなかった。以下、ネタばれ含みます。
双子ものといえば、『半神』。 本棚のどこかにあるはずだ。

半神 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

嘉栄と豊世。明治が終わる一年と少し前に生まれた双子。嘉栄の成長のスピードは、私たちのそれとは異なる。父親が死に、母親が死に、豊世が死に、豊世の娘も死に、そのまた娘も死んでも生き続ける。外にでることも許されず育った幼少時代。そして渡英。満州から戦後直前に帰国。その存在の奇妙さ故に再び国をでることも出来なくなる。誰とも深く関わることの出来ない、途方も無い孤独と絶望。
豊世の孫娘、るるちゃんが書いた一族の記録が本編。それとは別に、その記録を読んだ嘉栄の手記『嘉栄附記』が最後に。驚愕の事実の他に、彼女は未来を語っている。これが予言の書になったら――なんて。
悲しい話なのかな。なんだか私はとても勇気が湧いてきたよ。

確かにそうだ。
血は見えない。そう思った途端、よその家と比べてぐじぐじ悩んでいた心の裡がみごとに晴れた。嘘をつけと言われたわけではないが、ほんとうのことなんて、あやふやなものなのだ、とその瞬間に、子供ならではの嗅覚で感覚的に察知したのかもしれない。あの家のお母さんだって、ほんとにお母さんなのかあやしいものだ、そうだ、どの家のお母さんだって、深澤さんとそうちがわない。血なんて見えないんだから。まあ、そこまで強く意識的に思ったわけではなかったと思うが、そんなあやふやなものに翻弄されて、思い悩むことはないと悟ったわけである。