腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

母性

母性

母性

「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」
持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。二種類の女性、母と娘。高台にある美しい家。暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました──。それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語。

湊さんがそこまでいう作品はどんなものかと読んだ。
これを書くためには、どれだけ気持ちの逡巡があっただろうか。もしかしたら、全くのフィクションなのかもしれないけど。 以下ネタバレ含みます。


冒頭、ある女子生徒(17)が4階にある自宅から転落する。事故か自殺か。
そして「母親の手記」「娘の回想」「冒頭の新聞記事を読んだ教師」、この三つの軸で話は進んでいく。母親には母親がいる。溢れんばかりの愛を注いでくれた人。誰よりも大切な人。お腹を痛めて産んだ娘よりも。歪みながらも保っていた均衡は、嵐の夜に崩れ去る。そして、その真相がラスト 明らかになる。

もう一人の母親が登場する。嫁いだ先の姑。これが酷い。 小姑たちも酷い。まるで、私の母の話を読んでいるようだった。毒小姑も二人、流産させられたトコまで同じだった。母親を守ろうとしたはずが、裏目裏目にでてしまったトコも同じ...。   違うのは、私の母はちゃんと自分(子どもたち)を愛してくれていたところかな。

ラストは意外だった。でも腑に落ちた。

母性。 母性。 よくわからないとか言ったら、母親失格ですかね。