腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

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昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、刑事部と警務部が全面戦争に突入。広報・三上は己の真を問われる。究極の警察小説!

一晩で読みきるはずが...ボリュームもさることながら、警察組織の構造や人間関係やらがまぁ濃厚で、読んでも読んでも進んでる気がしない。            刑事から広報官へ不本意な異動をさせられた主人公の三上がまた、色々あって歯がゆい歯がゆい!三上が腹を決めてからの後半の怒涛のクライマックス。     こんなところあんなところに伏線が張り巡らされていたとは...。刑事部vs警務部、警察vsマスコミ、腹の読めない同期との対決に上司への服従、記者の突き上げ、そして娘あゆみの失踪。「もうやめて!三上のライフは0よ!」と叫んでタオルを投げ込みたくなるのを押えて、どうにかこうにかラストまで読んで良かった。
個人的に落涙した場面は、交通事故の被害者・銘川亮次に関する情報を読み上げた場面。まさか、ここにも伏線が張ってあったとは。

たまたまが一生になることもある


7年ぶりの新刊だった本書。刊行されるまで とんでもなく大変だったようです。
毎日3時間睡眠で書き続け、2003年に心筋梗塞で倒れる。同年には直木賞候補作『半落ち』の選考を巡り、同賞との決別を宣言。周囲の騒音雑音に次第に心のバランスを崩し、鬱状態に陥る。
それでも2004年からロクヨンの連載を再開し、4年前には刊行日まで決定したものの、自分を納得させられずに撤回。

医者でも記者でも多くの職業にはただそれだけで存在する意味がある。けれど作家は、人の心に届く本を書かない限り、存在する意味がない。あのまま本にすることは、自分がゼロであると認めることだった

「矜持、矜持と書いてきたくせに、自分はどうだ」と随分 己を責めたそうです。

マグマのような熱が本から伝わってきます。自分の小説の集大成と語っておられましたが、数年後さらなる大作をさらりと発表するのではないか。なんとも楽しみで恐ろしいです。