凛として、ひとり
- 作者: 淡路恵子
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2011/07/01
- メディア: 単行本
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幼少時代の戦争体験、そして父、母、兄たちのお話から始まる。ところどころ挿まれるちょっとした小話が楽しい。「ミミズって中はほとんど、泥なのよ」とか死期が近づくと頭が重くなるとか、梅肉エキスの作り方やら煙草の葉をもらってどうしたとか。淡路さんのこういうお話 好きだなぁ。
女学校卒業あと数ヶ月で中退し、松竹音楽舞踊学校へ。そして、黒澤明監督の映画『野良犬』で銀幕デビュー。フィリピン人歌手ビンボー・ダナオ氏と事実婚し、未入籍のまま2児をもうけるが離婚。歌舞伎役者で俳優の中村錦之助と結婚。2児をもうけた後に離婚。三男はバイク事故死。四男は自殺。
人生の不条理をいやというほど思い知らされてきたのだろう。
人間って、苦しい時は藁にもすがるのね。でも、所詮は藁は藁なのよ。
最後は、泥沼の底に足が着いた途端に浮かぶのよね。底まで行ったら浮かぶしかないのよ。全部、自分なのよ。人は当てにならないってこと。頼りになるのは自分だけ、絶対に。
素行不良に手を焼いていた四男のことを「大人になってからのあの子は見たくないのよ」と綴りながらも、「あの子が一番、錦ちゃんに似てたわね」「旦那のことばっかりして。一番大事なときに子どもに目が行かなかったんじゃないかと思うんです」と非情に強い後悔を吐露している。
生まれ変わったら イタリアの小さい村の太ったお婆ちゃんになりたいという淡路さん。とっても深い悲しみと愛情を秘めた女性。天晴れです。