何もかも憂鬱な夜に
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 文庫
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刑務官の「僕」は、18歳の時の殺人で死刑判決を受けた山井の担当になる。自分と似た部分を持つ彼に苛立ちと「何か」を感じるが……死刑制度と真摯に向き合う意欲作。
この小説の9割は憂鬱で出来ています。そして、残り1割が圧倒的だった。 こんな小説を書くのは辛くないのだろうか。作家の「業」なのか、それとも...。
主人公の上司が死刑制度について吐露する場面を何度も読み返す。彼は死刑反対ではない。しかし、その曖昧さに激しい憤りを感じている。死刑を実際に執行する現場側からの目線は新鮮だった。
佐久間という気持ちの悪い男がでてくる。この男が悪なら、施設長は対極の善だ。引っかき傷のように心に痕跡を残す部分はたくさんあったが、そのほとんどを解説でピース又吉さんが書き出していた。あそこもここもと引用してる解説も珍しいと思ったが、わかるよ。あそこもここも全部グッと来た。
思春期の混乱と衝動から逃れるように、彼女との行為に没頭する場面が心に残った。
あの時の僕がどう考えていたのかわからないが、恵子に自分の不安を言ったこともあった。自分はいつか、何かをやらかすかもしれない。何をするかわからないが、眠れない夜など、動悸が微かに速くなり、自分の異常を感じることを彼女に言った。僕はそれを喋りながら、性器が大きくなると、またすぐに恵子を求めようとした。恵子は、今のあなたが無事なら、それを一日ずつ続ければいいと僕に言った。