腹八分寄り道人生

なんてことない日常つらつら

献身

FAP(家族性アミロイドポリニューロパシー)は、おもに肝臓でつくられる特殊なたんぱく質が神経や臓器にたまり、やせおとろえ、やがて死を迎える遺伝性の神経難病。このFAPは日本では熊本県荒尾市と長野県に多く見られる。
かつては原因もわからなかったため、奇病、風土病と言われ、患者やその家族が激しい差別にさらされてきた歴史をもつ病気である。
患者数は、専門医によると、日本国内で約1,000人と言われている。
現在でも根治療法はなく、唯一の対症療法とされるのが、肝臓移植である。
本書は、突然、きょうだいが倒れてその看護に追われていた一人の女性・志多田正子が、同じ病院に似たような症状で入院している患者がいることに気づき、きょうだい同様に看護に奔走するなかで、FAP患者たちが置かれた過酷な状況を目の当たりにしたところから、彼女と患者たちの闘いの幕が上がる。
40年以上にわたってFAP患者を見つめ、支援し続けてきた志多田の、いまを生きる患者たちとその家族への、そして、未来の患者たちへのメッセージを記した胸に響く魂のルポルタージュ!

親がFAPだと2分の1の確率で子どもに遺伝する。
「娘たちにはこの病気が出ないように、私が全部もっていく。自分で終わりにする」と言い、43歳で亡くなった女性。(とても悲しいことに、娘さん二人とも遺伝子を持っていた)
この病気を根絶する方法は、FAP遺伝子を持った者が子をもうけないこと。
遺伝の有無を調べるには、胎児の段階で羊水検査をすればわかる出生前診断と、体外受精させた受精卵を調べる受精卵診断という方法があるという。しかし、海外で肝臓移植を受け、二人目の子どもを妊娠した女性は言う。

「母のときに羊水診断があったら、私は生まれてなかったかもしれない。私は遺伝子をもって生まれてきたけれど、生まれてこなければよかったとは思っていない。もし、生まれてこなければいまはない。生まれてきてはいけない命はないはずだ。だから、診断をして遺伝子があるから、ダメという選択はしたくない」

難しいね これは。 本書を読んで初めてこの病気を知っただけの私がどうのこうのいう資格はない。命は平等ではない。人生もプラスマイナス0なんて嘘。自分の意思で身の回りのことが出来る、なんて有難いことだろう。わたしの悩みなんて恥ずかしい。強くなろう。誰かのために動ける人になろう。


志多田正子さん。 すごい人です。

「他人と思って接したらできない。同情で始まったら同情で終わる。こちらが我が子だと思って誠心誠意やれば、相手にも絶対通じる」